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「今日…俺が来ることを知ってたんですか」
プライベートな交友関係に対しては砕けた口調だが、遊佐家など公的な交友関係にはつい敬語になってしまう。いつどこで誰に見られているか分からないからだ。
有賀は俺より一つ年下だが、公的交友関係に分類されるため敬語になってしまう。
有賀は俺の言葉にフン、と鼻を鳴らした。
「知るわけないだろ。自意識過剰か」
「…! どうも失礼しました」
やっぱり憎たらしい。可愛さのかけらもない奴だ。
だが取り残されたため2人でいざるを得ない。
「どこかお茶が飲めるところで休憩しますか」
くそ、なんで俺がこいつに気を使わなくちゃいけないんだ。すると有賀は突然俺の手を引いた。
「向こうで良さそうなのを見つけた。来い」
最初からそう言えば付いていくのに。どうして引っ張るんだろう。ただでさえ有賀は目立つのに、余計に人目を引いて恥ずかしかった。
どこかのサークルが催している喫茶店に入り、有賀はコーヒーを、俺は紅茶を頼むとすぐに出てきた。
男2人のテーブルに沈黙が訪れる。周りは俺たちをみてヒソヒソと話していた。
有賀はコーヒーを一口のみ、ジッと俺を見る。
見つめられながら紅茶を飲むというのはどうもやりにくい。気になってしまい、口を開いた。
「なんですか」
「…未練たらしいな、お前も」
は?
お前に何がわかるんだ。
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