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有賀はコーヒーを一口飲んでフッと息を吐いた。
「まぁ俺がどんな気持ちで生きてきたかなんて、お前に分かってもらうつもりはない。俺が欲しいのはそんなのじゃないから、どうでもいい」
「……有賀、まさか今までの全部本気だったんですか…?」
「冗談だなんていつ誰が言った?」
そう言って笑う有賀の顔が、やけに雄臭くて。不覚にもドキッとするのがわかった。
「愛してるよ、ガキの頃からずっと。いくら嫌われてもお前が好きだ」
その瞬間、時間が止まった気がした。
俺と有賀のテーブルだけが世界から隔離されているような。そんな感覚を味わった。
「…いつから。だって、今までそんな素振り全く…」
「いつからだろうな。お前だって俺と初めて会ったときのことなんて覚えてないだろ。従兄弟なんてそんなもんだ」
「話をはぐらかさないでくださいっ!」
だが確かにそうだった。
気づいたら有賀は俺のそばにいたし、同じ遊佐家の後継として育てられてきた。
なのに、なのに…。
俺はいつからこの男に愛されていたのだろうか。
だが今は蒼井への失恋で気持ちは手一杯で、有賀の気持ちを受け止められる状態じゃなかった。
そんな気持ちが伝わったのか、有賀は困ったように笑う。
「そんな顔をさせる気がして、言うのを躊躇われたんだがな。けど俺はもう我慢するのはやめにするって決めたんだ」
「……でも俺は」
「今までは手を出さないでやったよ、他に好きな奴がいるって言うから。だがこんな状況になってまで俺は獲物を野放しにする気はない。絶対に仕留めてやるから覚悟しろ」
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