265人が本棚に入れています
本棚に追加
黄色い歓声が飛ぶ中、ステージの中央に蒼井と氷室が立つ。2人とも王子様のような格好をしており、氷室は王道な、蒼井は可愛らしい王子に仕上がっていた。
司会によって最終結果が発表される。
僅差では合ったが、グランプリは氷室だった。氷室は相変わらず無表情でなにを考えているか分からないが、その隣の蒼井の方が嬉しそうだった。一斉に2人へ拍手が送られる。
ああ、眩しすぎる。
これ以上見てられない。
「…もう、いいでしょう。離してください」
そう有賀に訴えても、有賀は俺を離さなかった。何も言わずにじっとステージをまだ見つめている。
「まだ何があるって言うんですか、もうわかりましたから」
「まあ見てろ」
ステージ上の氷室がトロフィーを受け取る。そしてすぐに司会がインタビューしようとしたが、氷室は司会を無視して蒼井にズンズン近づいた。
…何をする気だ?
氷室は観衆の前でそのまま蒼井を抱きしめる。蒼井もこの展開は予想してなかったのだろう、顔が真っ赤になったり青ざめたりしている。
そしてそのまま氷室はあろうことか、蒼井にキスをした。
会場は一瞬の静寂の後、悲鳴に包まれた。だがそれはどちらかというと歓喜の悲鳴だった。蒼井は呆然として氷室の口付けを受け入れている。状況が全く読めないのだろう。
数秒のキスの後、氷室はゆっくりと口を話して観衆に高らかと宣言した。
「颯人とはこういう関係なので、俺の颯斗に絶対に手を出さないでください」
観衆は顔を赤く染めてコクコクと頷いている。美しいカップルにすっかり見惚れてしまっている。
そんな中、俺は急に足元がグラつく感覚を味わった。
最初のコメントを投稿しよう!