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なんだあいつ、なんだあいつ。
駆け込んだトイレのドアをピシャリと閉めた。
昔から有賀は何かと俺に突っかかってきた。いつも俺の不愉快なポイントを突いてくる。こちらがいくら鬱陶しそうな態度を取っても、有賀はちょっかいをかけることをやめなかった。
それにしても今回の件は指摘されたくなかった。蒼井への失恋はつい数日前のことだ。心の傷は全く癒えていない。
今までになく、本気だったのだ。
才能があるにも関わらず真面目で、努力家。一度だけ繋いだ手の柔らかい感触を、今も生々しく覚えている。時折見せる可愛らしい笑顔を、自分だけのものにしたかった。
目が僅かに潤んでくる。俺はこんなに女々しい人間だっただろうか。
ああ、会合の間だけは忘れられたのに。また思い出してしまったのも、全部全部、有賀のせいだ。
俺を可愛がる?
馬鹿にするのも大概にしろ。俺は蒼井を可愛がりたかったのであって、お前に可愛がられる趣味なんてないんだよ。
昔から有賀のことがコンプレックスだった。
いつも有賀と比べられ、1歳年下なのに俺より器用で優秀で魅力的で。にも関わらず小さい頃から有賀は俺に意地悪をしてきた。物を取られたり、追いかけ回されたりした。その度に千尋は俺に嫉妬して、俺に嫌がらせをした。
もううんざりだ。
何がしたいんだよお前たちは。
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