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学園祭当日。
都内でも有名な私立大学とだけあって、多くの人で賑わっていた。蒼井が見当たらなくて辺りをキョロキョロ見回すと、急に肩を叩かれる。
「遊佐先輩! お久しぶりです。来てくださってありがとうございます」
「おお、蒼井! 人が多いから会えてよかったよ」
久しぶりに会った蒼井は相変わらず可愛い。俺より少し低い位置にある顔を、ニコニコと綻ばせている。思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、グッと我慢する。
だって蒼井は氷室と付き合っているんだから。
ちょっと心が痛んだが、無視して話を続ける。
「蒼井は大学でも陸上をやっているんだよな、調子はどう?」
「いやー、氷室はいいライバルだし中々骨がある練習ですよ」
「…え、氷室?」
「言ってませんでしたっけ。氷室もこの大学で同じ陸部なんです」
蒼井がそう言った瞬間、誰かが蒼井の背後から覆いかぶさる。ハッとみると、相変わらず憎たらしいほどイケメンの氷室だった。
「颯人どこ行ってたの。探したんだけど」
拗ねたように氷室が蒼井に言う。しかしその眼は鋭く俺を貫いていた。明らかに牽制されている。
「ちょっと離れただけだろ。遊佐先輩を呼んでたから探しに来ただけだ」
「じゃあ俺も呼んでよ」
「悠と遊佐先輩はあまり関わりがないだろ」
「つれないなー、颯人は」
そう言って氷室は蒼井の腰を撫でる。その妙に生々しい触り方に、変な想像をしてしまった。
こんなとこ見たくなかった。
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