立ち位置

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 奥宮蓮は気まぐれに学校にやってくる。  彼には学校に友達がいない。先生も授業中、指名することもしない。奥宮蓮が学校で話す機会はほとんどなかった。  そのため、声を発すると驚く。  二重に音が重なったような若くもなく年寄りでもない不思議な声だ。 「おまえ、最近ぼっちだな。」  珍しく奥宮蓮のほうから鈴木に声をかけた。 「俺の正体を知ってるんだろう? あいつらに報告(チク)れば親も助かるぞ。その後は一生飛島の奴隷だ。クックッ。」 「…………。」  なんで知っている? そう聞き返したかったが鈴木は黙った。こいつすら敵かもしれない。 「ふん。群れることを辞めてしまえ。強い個体は群れる必要がない。俺は群れない。」  奥宮蓮は3時間目が終わると学校から消えた。  奥宮蓮の言っていることは正しい。飛島家の圧力に屈しずっと怯えながら生きるか、屈せず困難で孤独の道を生きるかだ。  鈴木は自分のことよりも父親のほうが心配だった。食欲をなくし痩せてきた。自分は高校の3年間だけ耐えれば済む。父親は簡単に会社を辞められない。  飛島(隼)はこれをずっとやって来たのか。逆らわず組せず。難しい距離感だ。  ストレスが続くと正常な判断ができなくなってくる。自分がいじめに遭っているのは坂下町に守り神がいなくなったせいだと思った。 『これから悪いことが起きやすくなる』白猫の女の人があの時そう言ったのだ。※ (契約さえ終われば……!!!)  何とか“契約”を成功させ、この状況から早く解放されたかった。 ※「悲恋の枯れ井戸」より P20 神の遣いより、”契約”と守り神不在について告げられた。
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