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虫喰い現象
次の日午後、稗田からオカルト研究部員に一斉メールが届いた。
『隠里(御泊)で報告された時間帯に虫喰い現象が起きた人物が、もう1人見つかりました。1年の大塚未藍さんです。今日の放課後、資料室に呼んでいますので話を聞きましょう。
鈴木くんと飛島くんは引き続き隠里の調査をお願いします!』
望実と瓜田は緊張していた。大塚未藍といえば学校で有名な美人だ。派手めの友達もいて”遊んでる子”という噂だった。
放課後、部長よりも望実と瓜田のほうが先に資料室に着いた。鍵のある場所は知っている。部長はなかなか現れない。
「ねぇ。部長より大塚未藍のほうが先に来たらどうする?」
「えっ!ムリムリぼく話せないよ。望実は女同士だからさ、部長が来るまで何とか話つないでよ。」
「おんなじ女でも、ぜんっぜん興味あること違うし、話まったく合わないんだけど!」
「えー! 美人苦手なんだよね。あいつらこっち見下してくんだろ?」
「美人は苦手って私への嫌味? ほんっと瓜田くんてあれだよ。」
「あれって何?」
ーーコン、コン。
「すみませーん!大塚ですけどぉ」
遠慮がちな声が聞こえた。
資料室の中では望実と瓜田が、お互い『おまえが出ろ』とジェスチャーで押しつけあっていた。そのうち外から部長の声が聞こえてきた。『助かった!』2人は顔を見合わせた。
「すみません、途中で顧問の先生につかまってしまい、遅くなってしまいました。どうぞ中へ。」と稗田が資料室の中へうながした。
大塚未藍は少し不機嫌そうにやって来た。
『おまえら返事をしろ』と思っているのだろう。しかし、こっちにはこっちの言い分がある。
部長からお互いを紹介されたが、すでに双方好印象はなく挨拶もろくに交わさなかった。
虫喰い現象について話しているうちに大塚未藍の顔色が悪くなってきた。隠里のところでは明らかに動揺し、体調が悪いと帰ってしまった。部長は名刺を渡していたが連絡が来るかはわからない。
「やはり隠里に何か心あたりがあるようです。ぼくは大塚さんと隠里の関係を調べてみます。」
部長が言うと、望実から意外な言葉が返ってきて瓜田は驚いた。
「大塚さんの具合が悪そうなので、私送って行きます!」そう言うと、リュックを背負い望実は慌てて大塚未藍を追いかけた。
※ 御泊 = 隠里
通称は隠里。観光客はこちらで呼ぶ。
地域の歴史に詳しい人、集落出身者は御泊と呼ぶ。
※奥宮のお爺さんと話すときは御泊、
観光や一般の人が関わってくる場合隠里と呼ぶことが多い。
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