望実、尾行する

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望実、尾行する

 望実自身も、なぜ送って行くと言ってしまったのかわからない。  虫喰い現象が自分のせいなのか、大塚未藍に関係しているのかが気になった。  ”送って行く”のは関係性上無理なので、後ろから“ついて行く”ことにした。  大塚未藍は、寄り道をすることなく駅に向かい電車に乗った。望実も追いかけて電車に乗った。見失わないように目で追っていると他のことに気がついた。  自分と同じように大塚未藍を見ている男がいたのだ。美人だから見ている人がいてもおかしくない。だが気になった。  坂下駅から2つ目の駅で降りた。男も降りて大塚未藍の後ろを少し離れて歩いている。途中からキャップをかぶり上着を羽織った。軽く変装したように見えた。注意深く見ている人なら気づくが、たいていの人はキャップと上着を変えただけで別人と思うだろう。    望実も気配を消して2人の後をつけた。  望実は152cmと小柄で、もともと目立つほうではない。  途中で大塚未藍が立ち止まり、スマホを操作し始めた。望実は電柱と木の影にとっさに隠れ、男は彼女の前を通り過ぎて行ってしまった。 (気のせいだったか)  大塚未藍が家に入ったのを見届けて帰ろうとしたとき、先程のキャップの男が戻ってきた。      大塚未藍の家の表札と窓を見ている。 (気のせいじゃなかった!)  少し怖かったが、帰宅時間帯は人通りもある。望実は男のあとを離れてつけていた。  駅まではつけられたが、帰宅ラッシュの人の多さに見失ってしまった。
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