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混沌
遺跡傷つけ事件の犯人は、まだ捕まっていない。似たような器物損壊事件から紛失まで細かな事件が頻発し捜査を混乱させていた。狙われたのは飛島家に関わるものばかりだった。
飛島爽達はイラだっていた。
立て続けに飛島家に関わる遺跡や施設が被害に遭っている。
「それに、奥宮と稗田。コソコソとっ!!」
周りに誰もいないのに思わず声がでた。
奥宮と稗田が近づいたのには裏があるはずだ。息子の爽玄に調べさせているが、まだ有力な情報はつかめていない。
「こんな時に、あいつまでっ!!」
神社の畳の床をかかとで踏み鳴らした。
飛島家が坂下町とその一帯を支配できた理由は、政府高官にコネがあったからだ。今までも何かと飛島家の後押しをしてくれた。
その人物から、最近になってよく爽達に電話が入る。何度か質問をされ訳がわからず答えられずにいた。
「何の為にいままで便宜をはかってきたんだ!使えんクズだっ! 話にならん。倅を動かす。おまえも、おまえの息子も邪魔をするなよ。」
世話になってはいるが、坂下町のことに手出しされるのが気に食わない。
その政治家の息子は坂下高校の3年だった。
都会の高校では雑誌モデルをし華やかな生活をしていたが女グセが悪すぎた。スキャンダルを恐れて1年前から坂下町に住まわせている。
そもそも息子とその政治家とは名字が違う。息子の女グセの悪さは遺伝だろう。
(倅を動かすだと!? 女たらしの小童に何ができる。あいつも朦朧したか!)
頻発する事件、奥宮と稗田の動き、そして政府高官が坂下町に興味を示すとなると……やはり何かが裏で動いている気がする。
爽達は神社の古い資料をしまった部屋へ入って行った。政治家にたずねられた言葉の断片を探し始めた。
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