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小さな記事
翌日、飛島神社から巨石が傷つけられたと被害届が出された。その他にも坂下町のいくつかの石仏や遺跡が同様の被害に遭ったとニュースで流れたが、町の人々はそれほど関心を示さなかった。
後日、地元新聞の片隅に小さな記事が載った。
傷がつけられた巨石に指紋採取用の紫外線をあてると、石全体が青白く光ったというものだった。どの地域から採掘されたものか、どうやって運んだものかと専門家も首をかしげている。坂下町に古くから伝わる天の巨人さんが運んだのではないか? と坂下町在住75歳女性が語ったと書いてある。
巨石に灰重石が含まれていたため青白く光ったようだ。今後地元の大学教授のチームが調査をするらしい。
春休み、オカルト研究部の活動で登校した鈴木が紙切れを皆んなに見せた。例の巨石が紫外線で光ったという記事である。
「遺跡傷付け事件の記事があったんで持ってきたよ。飛島は知ってたかもしれないけど。」
「えー! すごい。あの石、紫外線で光るんだ?知らなかったよ。誰も知らないんじゃないかな? これもマップに入れた方がいいすよね? 部長。」
坂下町の歴史に全く興味が無かった飛島(隼)も、1年が経ち歴史からオカルトまで詳しくなりつつあった。
「そうですね。載せたほうが皆さんに興味を持ってもらえそうですね。さっそく追加の原稿を書いて印刷会社に送りましょう。」
部長の稗田は、印刷会社や奥宮のお爺さんとのやり取りでなかなか忙しい。
坂下高校オカルト研究部では、坂下町にある史跡や伝説・昔話を集めたマップを作成していた。原稿はほぼ集まり、すでに印刷会社へ制作依頼をしている。
マップ制作の発案者である奥宮のお爺さんのアイデアで、可愛らしくキャラクター化された白猫や天の巨人が登場し、親しみやすく仕上がっている。
このマップはオカルト研究部、新入部員獲得のためにも利用する予定だ。
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