太陽の道

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太陽の道

 4月になり、稗田が高校3年生、鈴木と飛島が高校2年生に進級した。  オカルト研究部へは、1年の高井望実(たかいのぞみ)瓜田剛(うりたつよし)の2名が加わった。  マップの効果絶大とまではいかなかったが、坂下高校内でやっとオカルト研究部が認知されるようになってきた。  1年生が入部したため4月の第3日曜日、交流会として出来上がったばかりのマップを見ながら遺跡を巡ることにした。  朝、最初に向かったのは奥宮のお爺さんが住むマンションだった。巨石遺跡の1つがこのマンション裏にある。出入りは自由だが、裏山を含めて奥宮さんの土地なのだ。  “奥宮のお爺さん”とは、かつての秘境『御泊(おどまり)』にある雙星(そうせい)神社の神主さんだ。本人は自らを神主と呼ばす管理者と名乗っている。現在は孫と坂下町のマンションに住んでいた。 「ここの遺跡が無事でよかった。何の目的があって遺跡に傷をつけているんでしょうか。」たずねたのは稗田部長だ。   「飛島に恨みでもある奴じゃねぇのが? カッカッ(笑)こごにも飛島の関係者がいだんだっけ。ごめんね。」  奥宮のお爺さんは、ごめんねと言いながらも心から謝っているように見えない。 「飛島の関係者といっても、三男家の三男坊なので、あんまり関係ないんすよ。」  飛島(隼)は、このセリフを使い慣れていた。それくらい坂下町で飛島という名前は特別なのだ。  奥宮のお爺さんとそんな会話をしながら、裏山を登り巨石へと向かった。この石は平べったい形をし、見えている部分だけで身長の2倍くらいの高さがあった。  マップをひろげ、1年の高井と瓜田は興味深そうに方位磁石を覗き込んだ。 「ほんとだ。この石、平らな面が西を向いている。春分と秋分の日に全面に夕日が当たるのか。」  巨石の両側にも大きめな石が囲い、真西から太陽が登った時だけ平らな面を光が照らすのだ。巨石の周りは明るく開けている。木が覆い隠さないように奥宮のお爺さんが手入れをしているのだそうだ。 「もしかして、マンションが3階建なのは、巨石へ当たる太陽光を遮らないためでしょうか?」  稗田は、山の上からマンションの屋上を見下ろしながら言った。 「その通り、さすが(つづる)くん。高い建物が建っでしまわねように先に手を打っだのさ。」  
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