高井と瓜田

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高井と瓜田

「この遺跡は“契約”に関係あるのでしょうか? 縄文時代にすでに祭祀場(さいしじょう)として使用されているようですが。」   「関係はある。あるけども、どう関係しでるんかは……1000年の間に脱げ落ぢだのよ。オレはむしろ稗田の爺さんが知っでるんがど思っでだよ。」  1年の2人は、稗田と奥宮のお爺さんが何を話しているのか、意味がわからなかった。 「あの……契約って何でしょうか?」瓜田が話しに割って入った。   「天と地と人どの契約さ。今年、1000年目の契約が交わされるのさ。」   「すーげー!! SF映画みたいじゃないですか? いつですか?場所はここですか? うぉーー!!」  瓜田はオカルトの中でもUFOに興味があり興奮していた。 「契約は今年なのですが、何時何処(いつどこ)でというのはわからなんですよ。祖父によると“あちらから現れる”ようなのです。」  稗田は困った顔で答えた。奥宮のお爺さんに話を聞けば契約に関することが大方わかるだろうと思っていた。 ーー高井は現実感の無い話について行けていなかった。浮かれる瓜田が部活にすっかり馴染んでいるのに対し、自分は取り残されていると感じていた。 「信じられないよね? ぼくも1年前までこういうの興味が無かったからさ。でも本当みたいだよ。だって、ぼくと鈴木くんと稗田部長はすっごいもの見たんだから。」  そう言うと飛島(隼)は、白猫の(ほこら)で起きた出来事※を高井に話して聞かせた。  高井は白猫が女性に変わった話も信じられなかったが、飛島のような先輩と自分が話をしていることも信じられなかった。しかも飛島先輩は自分のことを「のぞみちゃん」と呼ぶのだ。 (ヤバイ。オカルト研究部はいろんな意味でヤバイ。)  すぐにでもSNSの美少年好き仲間に知らせたくてウズウズしていた。  そんな高井の様子を見ていた鈴木が、飛島の肩に腕をかけ高井に聞こえるように言った。 「大鳥女子の彼女はどうなったんだよー? もう高校卒業しちゃった?」 「うーん。彼女とは別れたんだよね。付き合うのは高校卒業までっていう約束だったからね。ユリちゃんはもう東京に行っちゃたよ。」 「そんなアッサリした付き合いだったのか?寂しくねーの?」 「寂しかったのはユリちゃんのほう。彼女はガンバリ屋さんだから兄弟のために東京に働きに行ったんだよ。ぼくは話を聞いてあげる癒し系ペットみたいなもん。」 「ふぅん。“付き合う”つっても、いろんな関係があるんだな。」  そう言うと、鈴木は高井の表情をちらっと見た。高井はこういうとき無表情になるほうだった。無表情の下で小さく失恋するのだ。  その日から高井望実は、オカルト研究部のメンバーに「のぞみちゃん」と呼ばれるようになった。ただし部長の稗田だけは頑なに「高井さん」と呼び続けた。 ※白猫の(ほこら)で起きた出来事 坂下高校オカルト研究部 奇譚【弐】「悲恋の枯れ井戸」P19〜21 より
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