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白猫 後日談
坂下町は山に囲まれた盆地である。東の山の正面には西の山が見え、眼下に坂下町が広がっている。
現在オカルト研究部がいるのが東の山の中腹である。西の山の中腹にも巨石遺跡がある。東の遺跡と西の遺跡を結ぶ一直線上に、白猫の祠、足窪池、坂下駅が点在している。
この日、オカルト研究部は全員自転車で集合した。徒歩で遺跡は巡りきれない。
皆んなで連なって走るのは少々恥ずかしい。気にしていないのは稗田部長と瓜田くらいだ。
白猫の祠をお参りした後、久しぶりにコーヒーショップねむの木を訪れた。店長の三津子(飛島の母)が明るく迎えてくれた。
本日のコーヒーとデザートを頼み、白猫の祠で遭遇した不思議な現象について瓜田にも話して聞かせた。
「ずっと気になっていたことがあるんです。」と稗田がきりだした。
「飛島くんのお母さんは、なぜ契約のことを知っていたのですか? 祠の下に通路があることも知っていましたよね。」
「あーそのことね。
独身時代、私には占いの師匠がいてね、彼女こそ巫女中の巫女ってくらいすごかったのよ。その師匠が言ったの『あんた将来、坂下町に嫁に行くよ』って。そこで将来起こるいろんなことを教えてもらったんだけど、私だって契約の話なんて知らなかったし、祠の下に通路があるなんてことも知らなかったわ。
師匠はね『行けばわかる』って言ったけど、本当にそうだったなぁ。祠の下に通路があるなんて、あの時頭にぱぱぱーって浮かんできたのよ。不思議よねぇ〜。」
「えぇっ?? 母さんあの時、何回か祠を動かして確かめたから大丈夫ってぼくらに言ったよね? あれ、嘘だたわけ? えー! バチあたりなことしちゃったよぉ。」飛島(隼)が呆れて言った。
「ごめ〜ん。ああでも言わないと少年たち怖がってたからさ。だいたい、男子高校生3人の力で動かした祠を私一人で動かせると思う?」
三津子はいたずら子の表情で、ふふふと笑った。
「ところで、飛島家の人たち契約のこと知ってるのかしら? この間それとなく探ってみたら、あの人たち何にも知らないのね。
ま、飛島が首をつっこむと面倒だから知らなくて結構ですけどね。」
飛島家は身内からも嫌われているらしい。
「飛島家は契約には関わっていないと思います。今のところわかっているキーパーソンは、地の神を祀る雙星神社の神主奥宮さん。天と地に別れた双子。地の神と人との間に生まれた子ども。そして立会人のぼくです。」
わかっていることは少なかった。稗田の祖父は「あちらから現れる」と言い、三津子も「行けばわかる」と言った。そういうものなのかもしれない。しかし先がわからず稗田は焦りを感じていた。
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