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西の遺跡へ
坂下駅前から移動し西の遺跡に着くと、人だかりができていた。
稗田は見覚えのある人物を見つけ声をかけようとしてやめた。見覚えのある人物とは白猫の件でお世話になった桜庭警部で、彼と立ち話をしているのは飛島神社の宮司爽達だった。
爽達の存在に気づき飛島(隼)は身を固くした。
「誰かと思えば隼じゃないか。」
爽達は、頭をまっすぐ前に向けたまま他のオカルト研究部員には視線もくれない。
「こんにちは。高校の地域歴史研究部※の人たちと一緒に遺跡を見に来ました。」
「爽玄が話していましたよ。隼は仲間とおかしな地図を作っているとか。私に相談してくれれば正確なことを教えられますよ。」そう言うと爽達は小さく手を出した。
飛島(隼)はマップを爽達に手渡した。いつも柔和な飛島の様子がおかしい。表情は固くやけに従順だ。
「これは自分たちで調べたのですか?……天の巨人のキャラクター。はぁなるほど。入れ知恵は奥宮の爺さんですか。……そこには稗田|の孫もいるようですね。」
爽達は白くうっすらとお化粧をし、目は細く吊り上っている。目の端で稗田をとらえたようだ。
「こんにちは。ご無沙汰しています。」
稗田も挨拶をした。
爽達は稗田を見ることなく応えた。
「奥宮の爺さんと何を企んでいるのか知りませんが、そんな空想まがいな地図を作ったところで置いてくれる場所はどこにもありませんよ。ふふん」
爽達は脅すことなどしない。する必要がない。最後まで言わなくても勝手に周りが忖度するからだ。
そのまま、オカルト研究部員に目をやることなく爽達は人だかりの中へ戻った。
※地域歴史研究部
坂下高校オカルト研究部の正式名称。オカルト研究部という名称では部活新設の申請が降りなかったため付けられた名称。
「虫喰いの手紙」P15で明かされた。
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