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ある日突然、長老がカナタに啓示を与えた。
長老といっても、この街に来て初めて出会ったハクビシンだ。雷獣の血筋に連なるものであることは確かだが、縁もゆかりもない。
街はずれの木造モルタル二階建てのアパートの空き部屋で、何年もずっと瞑想を続けている、というよりも、いつもうとうと居眠りしている長老のところに、なぜかカナタは足しげく出入りしていた。
―この街で功徳を積め―
功徳というのが何のことかわからず、カナタはきき返した。長老はめずらしく素直に応えた。
―他のケモノを救うのだ―
なんのために?間髪おかずにカナタはたずねたが、もう長老から言葉は返ってこなかった。
また眠ってしまったのか、と顔を近づけ、おそるおそる様子をうかがう。
とたんに、長老は首をもたげてつぶやいた。
―ひまをもてあましてるだろう?―
すっかり見透かされたカナタは、驚いているのを隠しながら、ゆっくり首を後ろへとのけぞらせると、前肢で耳の後ろをぼりぼりとかいた。
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