第二章 光迅を祭る

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 ネギ畑に棲んでいたという一族は、他の群れとは少し様子が違った。  一匹の若い小さな雌を、雄たち全員で、陣を張った倉庫のトタン屋根の上へ、大事そうにかつぎあげようとしている。 ーこの娘がたった一匹の跡取りだー  さっき、ナガレにサリュウと呼ばれた老体が、空に向けて呼びかける。 ーどうか、地上から連れて行ってくれー  喉を嗄らし、サリュウは叫ぶ。 ー雲の上に一族の血を残したいー  雌もまた、その想いに必死で応えたい様子だ。 ーイカズチよー  雄たちの肩の上で、思いのほか朗々とした声をあげる。 ー私を稲光にのせてー  イツカよりは成熟していて体も大きいが、まだそこそこ若い。    ふいに、そのうちの一匹がふらりとよろけ、雄たちのかたまりからはがれるように倒れた。  続いて、さらに一匹が金具につまずいて落下する。  それでも、かたまりはうごめきながら、屋根の一番高いところへと雌を運んでいく。真下にいる雄たちは、せいいっぱい伸びあがって、雌を少しでも高くかかげようとする。  危なくてとても見ていられない。カナタは首をすくめた。
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