第二章 光迅を祭る

14/23
前へ
/361ページ
次へ
 頭上で、たてつづけに何本かの光の筋が走る。  カナタも、さすがに身の危険を感じた。  皆が口にしている祈りなどどうでもいい。  襲いくる稲妻から身を護ろうと、イツカの隠れている方へだっと駆け出す。  だが、すでに遅かった。  一本の光が、真っすぐカナタのいる方に向かって伸びてきた。  とたんに、すべての動きが凍りついた。  ひとつの瞬間が、永遠にひきのばされたかのようだ。  自分が蹴り飛ばした砂や小石が、じわじわ回転しながら、ゆっくりと目の前を舞っていく。  と思う間もなく、周りのすべてが真っ白な輝きに包まれた。  何も見えない。まるで白い闇だ。  むせるほどの雷気が周りをおおいつくす。  ところが、まったく何も見えないはずの視界の端で、何かが蠢くのがわかった。  白い闇よりさらに蒼白く輝く何かが、天頂からぬっと伸びてくる。  カナタは、むりやり首をねじ曲げた。  あれは……。  毛むくじゃらでたくましい、ニンゲンかサルのような何かの腕だ。  目の前の鉄塔よりも、はるかに長く、太い。  一本一本の毛はまるで針のように鋭くとがり、腕の内側から放たれる眩い光が、毛先から火花となって散っている。  あまりの巨大さに恐怖がいや増す。  掌が、おもむろにくわっと開かれた。
/361ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加