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「久しぶり、清くん」
肩で切り揃えられた黒髪とスカートをそよ風になびかせて立つ女子生徒。
星井華弥。
俺の、想い人だ。
「久しぶり。クラス別れて以来だな。来てくれてありがとう、星井」
「うん、全然大丈夫」
呼び出したのは俺なのに。来るのは分かっていたのに。
周りの音は聞こえなくなっていた。身体全体が心臓になったように鼓動する。
正直、こわい。
暗闇の中。
一歩先は断崖かもしれない恐怖。
それでも光があることを信じて、震える足を踏み出さなきゃいけない。
俺は初めて“勇気”の意味を知った。
こんなに命懸けの感情だったとは。
いっそ逃げてしまえたらどんなに楽か。
でも、そんなことも言ってられないよな。
こわいけど。
決めたんだ、伝えるって。
「たぶん、大体わかってるかもだけど」
「……うん」
変に前置きしてしまった。でも立ち止まるわけにはいかない。文脈なんて知るか。
今までの人生で、一番の勇気を振り絞って。
俺は口を開いた。
「実は俺、星井のことが」
「ごめん待って」
「え」
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