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そんなの認めたくない。
手を震わせながらも思い切って呼び出して。
怖気づきそうになる自分を無理矢理奮い立たせて。
そして、いざ告白しようとしたところで急に止められて。
最後の一滴まで振り絞った、俺の勇気は一体どうなる?
その勇気が出せたのは、俺が君に伝えたかったからなのに。
「うん、そうだよね……」
少し悲しそうにした後、すぐにその大きな瞳に闘志を宿して彼女は言った。
「――じゃあ、勝負だね」
「へ?」
彼女の唐突なセリフに俺は面食らって、咄嗟に言葉が出てこなかった。
「どっちが先に告白できるか勝負だ!」
「な……」
びしっと指を差して星井は宣言した。
いやどっちが先に、って。
「いやいや待て待て。これから俺が」
「では家に帰って作戦を練る! さらばだ!」
止めようとする俺の手は届かず。
星井は勢いよく屋上を飛び出していった。
「嘘だろ……?」
マジかよ。逃げられた……。
怒涛の展開の連続に呆然とする俺に、周囲の音が戻ってくる。
鳥の声がやけに空しい。
告白には勇気がいる。
しかしそれ以前に、”権利”がいるのだと俺は知った。
――かくして、非常に不本意ながら。
俺と彼女の"告白権"を巡る戦いが幕を開けたのだった。つらい。
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