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「……告白できなかったんだよ」
「え、なんで。ビビったのか?」
「いや止められた」
「止められた? どういう意味だよそれ。天変地異でも起こったのか」
「俺が一番わかんねえよ」
「ええ……?」
後ろの席で混乱する洋介を放置して、俺は教室を飛び出す。
――本当に、どうしてこうなったんだ?
俺は駆け足で下駄箱に向かいながら思った。手すりに片手で掴まってバランスを取りながら、二段飛ばしで階段を駆け下りる。
昨日を境に、天国のようなカップルライフか地獄のようなシングルライフを送るはずだったのに。
そりゃどちらかというと天国のほうが嬉しいけれど、こんな展開は予想していなかった。
どちらにせよ、何らかの区切りはつくはずだったのに。
まあいいか、と俺は考えるのをやめた。昨日が今日になっただけの話だ。
今は作戦に集中しよう。
廊下に放課後の喧騒はまだない。
ホームルームが終わってすぐに教室を飛び出してよかった。いくら帰宅部の彼女とて、まだ下駄箱には着いていないはずだ。
俺は周りから隠すように持つ封筒が折れていないか確認する。
こんな予定ではなかったが、昨夜急遽したためた恋文。
いわゆるラブレターというやつだ。
これを星井の下駄箱に入れておく、というのが今日の作戦である。
そして帰る時に彼女はそれを見つけ、俺は告白を成し遂げるという寸法だ。
名付けて『下駄箱からひらり、一通のラブレター大作戦』とでもしておこう。
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