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広斗の言葉は遮られた。蓮司が前方を指差している。
廊下の一番奥に、鉄製の錆びたドアがあった。たった今、出現したかのように、そのドアはやけに浮かびあがって見えた。ドアの白い塗装がパリパリと剥がれ、橙色の錆が覗く。ドアノブはなく,コの字型の取っ手がついていた。
他の部屋のドアは全て木製なのに、ここだけが違う。そのドアは明らかに奇異だった。
「あそこを開けたら、終わりにするか。じゃ、開けてきて」
「は、明は?」
「おれは撮影係。一緒に並んだら、お前らが写らないだろ」
「うへっ、そうですか。……広斗、行こう」
そう言いながら、蓮司は広斗の肩に手をかけた。こうすると、隣に並んでいるようで、実は広斗の少し後ろを歩いているのだった。
ちょっと卑怯な奴だな。広斗は思ったが、咎めないでやった。
三人は錆びたドアの前までやって来た。広斗と蓮司はちらっと顔を見合わせると、一緒にドアの取っ手を掴んだ。
ギギ……ッ。
重たい轢音が空気を騒めかせる。ドアの隙間から、埃とは違う生臭い匂いが漂ってきた。
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