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私は男性に何かしてほしい、とあまり思わないタイプだ。
例えば、道路を歩く時は私を車道から遠い方にしてほしいだとか、デートで行くお店を毎回決めてほしいだとか、誕生日やクリスマスには夜景が見えるロマンチックな場所でお花だとか素敵なアクセサリーだとかをプレゼントされたい、とかそんなことは思わない。ドラマや漫画で美男美女のそういうシーンを見ても、所詮エンターテイメントの世界だから、と思っていた。
私達の場合、デートで何をするか、どこに行くか、何を食べるかを考えるのはいつも私だった。私の誕生日でさえも『好きな店予約しといて。金出すから。』とだけ言われたし、誕生日当日、私がほしいものを買うのに彼がお金を出してくれて、それがプレゼントになった。
それでも一緒に誕生日を過ごしてくれることが嬉しかったけれど・・・もし自分の為に彼が選んでくれたなら、均一居酒屋でのロマンティックとは無縁の食事や、ディスカウントショップで売っているビンゴゲームのネタ景品に使われそうなプレゼントだったとしてもそちらの方が嬉しかっただろうな、と思う。
誕生日の時だけでいいから、一緒にいない時に私のことを考えてお店やプレゼントを選んでくれる・・・密かにそういうのに憧れていた。
どちらかの家に行けば体を重ねたけれど、それもルーティン化してしまっていて、なんだかな、と思っていた。私はそういう欲求が強いわけでもなかったし。
それらが大きな不満だったわけでは決してない。不満だったら優悟にそう伝えていたと思うけれど、それほどの気持ちではなかった。
ただ、彼と私はわざわざ恋人でいなくても、友達の一人とかラーメン仲間とか飲み仲間とかそういう関係でいいんじゃないかと思った。洋服や食器と同じで、このままダラダラ付き合い続けるより恋も断捨離をしようと思ったのだ。25歳になるのだから、恋愛も大人としてちゃんとしないといけないと思ったからでもあった。
優悟は『よくわかんないけど、千咲がそう言うなら。』とすんなり頷いた。彼にとっても私はそのような存在だったのだ。一緒にいるんならいるけど、いないならいないでいいような。
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