175人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな勇者と別れて晴れて私は身軽な身になった。別に今までも重くはなかったけれど。
正直、ちょっとの寂しさはある。でもきっとすぐに一人にも慣れるだろう。
───今日から新しい毎日のスタートだ、というのは大げさかな。
空気は新年特有のぴん、と張ったもので(これはこっちの気の持ちようで、空気は昨年と何ら変わっていないことはわかっている。)、お店やオフィスビルの入り口には『謹賀新年』と書かれた細長い紙が貼られ、門松が立っている。
それぞれの職場に向かい歩いている人達はまだ休みの名残で眠そうだったり顔がプライベートモードの人が多いが、心機一転頑張ろうと思っているのか厳かな表情の人もちらほらいる。私と同じで、帰省先や旅行先で買ったであろうお土産の紙袋を提げている人も多い。
今年の仕事始めは月曜日なので更に『新しいスタート』感が高まっている。
よく晴れた新宿の空の下、ピリッとした冷たい風が新しく買ったパステルブルーのフレアスカート───裾から数cm上に白いピコレースのラインが入っている───を揺らす。なんだか背中を押されたような気がして、私は気を引き締めて背筋を伸ばし、いつもより大股で歩き出した。おろし立てのパンプスのヒールはいつもより高くて、目線が数cm上がっただけで随分と気分が変わるんだな、と思った。
軽快にヒールの音を響かせて会社まで行こう・・・そんなことを思っていたのに、一歩目から見事に出鼻をくじかれることになった。
最初のコメントを投稿しよう!