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優斗に、とうとう言ってしまった。
直接、全部ぶちまけてしまった。
優斗の驚いた表情がフラッシュバックした。
あーっと叫んでしまいたくなる。
穴があったら入りたいくらい、恥ずかしい。心臓は、ドクドクと早く脈打ち、胸から飛び出しそうだ。
慎二は、走った。
歩行者にぶつかりそうになりながら、とにかく、走った。
額や、こめかみから汗が噴き出し、息が上がる。真夏の太陽は、容赦なく慎二を追いかけてくる。
家に着いたときには、Tシャツが汗でぐっしょりと濡れていた。力強く握りしめていた缶コーラの跡が、左手に赤く食い込んでいた。
優斗は、きっと自分を気持ち悪がっているだろう。
親友と思っていた男が、ずっと、自分に恋心を持っていたと知ったんだからな。
今の時代、性的マイノリティーに寛大になったとはいえ、身近にそういう人間がいた場合、理解できるのはまだごく少数だと思う。いまだに、カミングアウトしたかとかいう話になるのはそういう訳だと思う。
だから、優斗がそう思っても無理はない。
できれば、秘密にしておきたかったけれど、あのまま、高宮を好きだと誤解されることの方がもっと嫌だったから。
今は、後悔という2文字は不思議とない。
どういうタイミングであれ、自分は行動を起こしたのだから。
家に帰るなり、すぐに、シャワーでぐちゃぐちゃになった頭も顔も体も全て押し流した。
優斗が、高宮と付き合っているとかそんなことは、もうどうでも良くなっていた。
優斗に想いを告げることができた。
時間が経つにつれ、心の奥にあった重しがなくなったような、スッキリした気分の方が大きくなっていった。
あとは、時間が解決してくれる…… んだよな……。
今は、そう信じるしかなかった。
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