君だから

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「さあ、次々焼いて」  1年の女子が鍋奉行ならぬバーベキュー奉行となって、1年の男子2名に指示を出している。  牛肉が鉄板にジュウといい音をたてて焼かれ、香ばしい匂いが煙に乗って慎二の腹をグーッと誘ってくる。  バーベキューと言えば定番のウインナーに玉ねぎ、キャベツ、ピーマン、具沢山の野菜も鉄板の上にたくさん投入され、皆、待ちきれないといった感じで、鉄板を囲み、女子部員の合図を待つ。 「いい具合です、どうぞ、どんどん、食べてください!」女子部員の合図に、待ってましたとばかりに、「おーっ」と、飢えていたヒナドリのように、皆、一斉に、お箸を持つ手を伸ばした。 「やっぱ、自然の中で食べる肉はうめー」と誰かが言い、皆、口を揃えて、美味いと口に頬張り頷き合う。  食べ盛りの高校生男子が数人集まれば、次から次へと肉が焼かれ、食べる調子が上がってくる。  気の合う仲間と一緒に食事をすることは、それさえも特別で、いつもより倍、食欲を増すのではないかと思う。加えて、オレンジに染まる空や戸外の風が彩りを添えるのだ。 「若いもんには負けんぞー」という顧問のどこにでもあるギャグにどっと笑いが起きた。  慎二は、そろそろ、お腹が落ち着き、コーラが飲みたい、そう思ってクーラーボックスの方を振り返るタイミングに、三上が笑顔で「はい」と差し出した。 「お、サンキュ、三上。気が利くな」 「部長は、コーラ好きですもんね。って俺もですけど!」  慎二は、他人にもわかるほど、いつも、コーラを飲んでいたのかと思い返しながら、三上から手渡されたコーラを勢いよく飲んだ。喉を通過してく炭酸が、夏の夜と、バーベキューを食べた後の刺激をいっそう増して美味い。    気づいたら、宵が周りの森を覆い隠し始め、空には夏の星が輝き始めようとしていた。
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