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それから、三上は、ベンチに座り直し、遠くを見つめるように語り始めた。
中学1年の頃、家庭教師だった6つ上の男子大学生を好きになったこと。その大学生はカメラマンを目指していたこと。休日に、一緒に出掛けるようになってカメラを教わるうちに、三上自信も本気でカメラの虜になったこと。
その相手は、三上が中学3年の頃、カメラマンとしてアメリカで活動したいと、大学を中退して渡米したこと。
今は、カメラマンとして一線で活躍しているらしい。
だから、三上も、アマチュアコンテストで優勝を目指したり、もっともっと、腕を磨いて肩を並べるようになりたいと思っているということだった。
「その人とは…… その後どうなったか…… 聞いてもいい?」
「もちろんです。渡米するって知って、俺、ダメもとで告白したんです。今考えたら、カミングアウトと告白を同時にするなんて、無謀だったなって思いますけど、そのときは、もう必死でしたから。振られて、気持ち悪がられても、どうぜ、アメリカに行くんで、もう会えなくなるしいいかなって」
「それで……?」
「ありがとうって言ってくれました。男性を好きだとかどうとか、そういうのをこだわる人ではなかったんです。今は、メールや手紙でやりとりしたり、日本に帰国したときは、会ってます……… 」
「そっかー、いい人に出会えたんだね」
好きな人を思い描いて話す顔。
三上も、そういう表情をするんだな。
慎二まで幸せな気持ちになった。
「俺、大学は、アメリカに留学しようと思ってるんです。そしたら、彼…… 一緒に住もうって言ってくれて……」
「彼かあ…… 三上、良かったね」
「あ…… つい」
「いいよ、いいよ、三上、幸せそうだなあ、ほんと」
好きな人に愛されるという幸せ。
——自分も、いつかは、好きになった誰かに愛されるだろうか。
「じゃあ、三上、相思相愛の相手がいるのに、いくら確かめるためとはいえ、俺に好きだと嘘の告白なんかして、もし、俺がその気になったらどうするつもりだったの?」
「それは、全然、大丈夫だって自信がありました」
「え、どうして?」
「だって…… それは…… 部長は、バスケ部の早川先輩のことが好きですよね。俺、わかってましたから。だから、即効、断られるってわかってました」
「えっ!?」慎二は、顔や耳に、熱が一気に上昇した。
「部長、いつも早川先輩のこと目で追っているし、早川先輩のことが好きだって、顔に出てますもん」
慎二は、顔から火が吹き出しそうになった。
と、同時に、堰き止めていた優斗への思いが迸り、見上げた星空が瞳に滲んで、溢れた。
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