102人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「三上…… ほんと、ありがとう、気持ちが大分軽くなったよ……」
慎二は、深く呼吸をして夜空を見上げた。
「よかったです……」
「三上が羨ましいな、好きな人に愛されてさ……」
「先輩も、うまくいくといいですね……」
「うーん…… 俺は、多分無理かな……」
会話に少しの間が空いてから
「俺は…… うまくいくような気がするんですよね」と三上が、意外なことを口にした。
一縷の望みがむくむくと慎二の心の中で動き出しそうだった。
優斗との希望が見出される根拠など、どこにもないのに……
わずかな望みでもあるならすがりたい。
自分は、諦めぎわが悪いなと思いつつ、慎二は、三上の横顔を食い入るように見つめていた。
「勘というか……」
三上は、遠くを見つめながら、自分の考えをまとめているようだった。
「仲のいい、先輩と早川先輩の空気感ていうか…… 」
「へえー、空気感……?」
俺と、優斗との空気感……
他人から見て、どれほど、仲が良く見えていたのだろうか。
自分は、優斗の1番の親友だと思っていたし、優斗もそう思ってくれている。
ずっと、そのはずだった。
それは、今は、もう遠い昔のような気がする。
「先輩は、早川先輩だから、好きになった。でしょ?」
「え?」三上の突飛な質問に、慎二は、意表を突かれた。
言っている意味がすぐには飲み込めない。
「他の誰もじゃない。早川先輩だから、好きになったんじゃないですか?」
他の誰もじゃない…… 優斗だから?
小学生の頃から、一番気が合って仲良くなった。
でも、ただ、それだけじゃなかった…… と思う。
優斗だから、心を許せた。
優斗だから、いつも一緒にいて楽しかった。
優斗だから、そばにいたいと思った。
優斗だから、そばにいてほしかった。
優斗だから、好きになった——
他のだれもじゃない。
優斗だから……
「俺も、彼だから好きになった。心はわかってたんだと、今、思うんです。だから、先輩も…… きっと、うまくいくような気がするって、そういう意味なんです…… だから、自信を持ってください…… あ、すみません、ちょっと、神がかり過ぎでしたね」
三上は、頭を手でかきながら照れ笑いをして夜空を見上げた。
慎二は、不思議と単純に、そういうことはあるかもしれないと思えた。
自分が好きになった優斗だから、信じてみたい。
「あっ、流れ星!」
そう思った瞬間、一筋の星が、銀色の光の尾を引いて流れた。
最初のコメントを投稿しよう!