君だから

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「三上…… ほんと、ありがとう、気持ちが大分軽くなったよ……」  慎二は、深く呼吸をして夜空を見上げた。 「よかったです……」  「三上が羨ましいな、好きな人に愛されてさ……」 「先輩も、うまくいくといいですね……」 「うーん…… 俺は、多分無理かな……」  会話に少しの()が空いてから 「俺は…… うまくいくような気がするんですよね」と三上が、意外なことを口にした。    一縷(いちる)の望みがむくむくと慎二の心の中で動き出しそうだった。  優斗との希望が見出される根拠など、どこにもないのに……  わずかな望みでもあるならすがりたい。  自分は、諦めぎわが悪いなと思いつつ、慎二は、三上の横顔を食い入るように見つめていた。   「勘というか……」  三上は、遠くを見つめながら、自分の考えをまとめているようだった。 「仲のいい、先輩と早川先輩の空気感ていうか…… 」 「へえー、空気感……?」    俺と、優斗との空気感……  他人から見て、どれほど、仲が良く見えていたのだろうか。    自分は、優斗の1番の親友だと思っていたし、優斗もそう思ってくれている。  ずっと、そのはずだった。  それは、今は、もう遠い昔のような気がする。 「先輩は、早川先輩だから、好きになった。でしょ?」 「え?」三上の突飛な質問に、慎二は、意表を突かれた。  言っている意味がすぐには飲み込めない。 「他の誰もじゃない。早川先輩だから、好きになったんじゃないですか?」    他の誰もじゃない…… 優斗だから?  小学生の頃から、一番気が合って仲良くなった。  でも、ただ、それだけじゃなかった…… と思う。    優斗だから、心を許せた。  優斗だから、いつも一緒にいて楽しかった。  優斗だから、そばにいたいと思った。  優斗だから、そばにいてほしかった。    優斗だから、好きになった——  他のだれもじゃない。  優斗だから…… 「俺も、彼だから好きになった。心はわかってたんだと、今、思うんです。だから、先輩も…… きっと、うまくいくような気がするって、そういう意味なんです…… だから、自信を持ってください……  あ、すみません、ちょっと、神がかり過ぎでしたね」  三上は、頭を手でかきながら照れ笑いをして夜空を見上げた。  慎二は、不思議と単純に、そういうことはあるかもしれないと思えた。    自分が好きになった優斗だから、信じてみたい。 「あっ、流れ星!」  そう思った瞬間、一筋の星が、銀色の光の尾を引いて流れた。       
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