痴話喧嘩

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痴話喧嘩

「お邪魔しまーす・・・・・・」  こっそりと部屋に入ると、たった一日だというのに廊下に脱ぎっぱなしの衣類があちこちに落ちていた。それを拾いながらリビングダイニングに行くと、鷹城が何やらこちらに背を向けてスマホで電話をしているところだった。 「だーかーらー、ちゃんと説明しろよ。なんでそんなに怒ってんだよ」  鷹城が言った。 「だから、それは最初から約束は出来ないって言ってただろ。映画の出演者は全部オーディションで決めてるから、俺が口を挟むことはできないって。で、お前オーディションは受けたのかよ。――え? じゃあ仕方ねえじゃん」 『――! ――!!』  スマホからキンキン声が漏れている。高さと勢いから想像すると女性のようだったが、何を話しているのかまでは分からない。ただとてもヒステリックな様子だ。 (彼女かな?) 「アタシの時間を返してくれって言われても、時計を巻き戻せるわけねえだろ。勘弁してくれよ。――は? 俺たち付き合ってねえだろ。お前もちゃんと分かってただろうが。だから責任だなんだってギャンギャン騒ぐのはルール違反だよ」
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