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その心配はないだろう、と目にかかるほど伸びた前髪をまぶたに感じながら思う。
自分は容姿も普通だし、性格も決して社交的な方ではない。何より清潔にする以上の手間を容姿にかけるのが面倒くさいという、いわゆるいけてない男だからだ。
昔からの友人達は、
――真琴は素材はいいんだから、もう少しオシャレしろよ。そうすれば全然違うのに。
と言ってくれるがそれは彼らの優しさから出た言葉であって、本人はオシャレには縁がないと半ば本気で思っている。
(服を買う余裕があるなら、もっと本に使いたいくらいだ)
大好きな推理小説に使うお金はいくらあっても足りなくて、だからこうして空いた時間に家政夫のアルバイトをしているくらいだ。
――ごめんねえ、真琴ちゃん。ゴローちゃんは優しいから、きっと大丈夫よお。
真琴はつい一時間ほど前に電話口から流れてきた、六十代のベテラン家政婦、林みどりさんのおっとりした声を思い出した。
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