チョンマゲ

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「次は熱海~熱海~」 東海道線のグリーン車の一角を占めていた我々の集団は、一斉に飲み散らかしていた缶やおつまみを片付け始め、降りる準備をしている。 「はぁ~」と新人の僕は、他の諸先輩に聞こえないようにため息を出し、率先して飲み残しなどを集めていた。 東京駅から始まった、車内での長かった宴会もまずはこれで終わりだ。 僕は今年の4月から新社会人となり、力原(ちからはら)信用金庫に勤めている。 東京西部を主な営業エリアとしており、そこそこ規模も大きい。 が、僕も入ってみて初めて知ったのだが、ゴリゴリの体育会系の信用金庫だった。 (力原=パワハラと揶揄する人もいるくらい・・・) 新人の僕も、先月からお客様を受け持って営業活動していますが、まだまだ成果が上がらない状況です。ただ新人だからという理由で、いろいろと大目にみてもらってます。 今日は1泊2日で、勤務している支店の有志による(男性社員だけだが)厚生(強制)旅行で、東京駅に集合した我々は、東海道線のグリーン車の連結部分の一角を占拠し、1次会の宴会を行っていた。 もうすでに出来上がった酔っ払いの一団は、歩いて宿泊先である温泉旅館に向かっていった。今日の宿は支店長のお気に入りの宿で、厚生旅行となると、毎回ここに来ているらしい。 ちなみに支店長はの口癖は、「何事も一生懸命やれ!」で、仕事も非常に厳しく、部下たちからは恐れられている存在である。しかし、その頭髪は ストレスのためか、年齢によるものか、遺伝なのか分からないが、頭頂部にはまったくなく、後頭部から両耳の上くらいに髪が残っている。 分かりやすく言えば、波平さんの1本の髪の毛がない感じだ。 先輩達は、その風貌から「落武者」と陰で呼んでいた。 宿に着いた我々酔っ払いの一団は、荷物を置き、6時から始まる宴会までは思い思いの時間を過ごすことになっている。その宴会では厚生旅行恒例の、かくし芸大会も予定されており、支店長含め参加者全員が何かしらの芸を披露することになっている。 まぁ僕はビートたけしの❝コマネチ❞でもやるかと、適当に考えていた。 6時までの間、僕はせっかく来たのだからと、海の見える温泉に入ったり、お土産を見たりして過ごしていたが、諸先輩方も温泉には入ったが、麻雀をやったり、若手職員の5人はカラオケルームを借りて、何やら打ち合わせをしていた。 そして、6時になり宴会が始まった。
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