たいせつなこと

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 2年A組、私の教室。  何度も確認した、間違いない、ここでいい。  教室から聞こえるざわめき、大体廊下にいるのは私ぐらいだもの、ほとんど皆登校しちゃってるんだろう。  そんな中に入るのは勇気がいるけれど早めに来ての注目がすごいことになるかも、と登校時間を遅らせた。  教室の戸をガラッと開けた瞬間、一斉に皆の注目を浴びる。  あ、皆固まっているみたい。  そりゃあ固まるよね、クラスメートが頭に変な物つけてるの見たら。  何か変な装備してるみたいだもんね?  あ、でも頭だけなんだよ?  手足は無事なの、ピンピンしてる。  それはきっと私の身体が頑丈だったからだろう。  微妙なな空気が広がる中、見回すと窓際の席が横並びに二つ開いているのを見つけた。 『松永の席は窓際な』  昨日様子を見に来てくれた先生がそう言っていたから多分窓際。  皆の注目を一身に浴びながら歩き出し、窓際の席の椅子をひくと。 「、そこサヤマの席」  リンタロー? 私のこと?  私の名前が(りん)だから、そんなお笑い芸人みたいなあだ名になってるわけだろうか?  近くにいた男子が困った顔をしながらも、私の間違いを指摘してくれたので。 「どうも」と呟いて窓際から二つ目の席に座ることにした。  先生、もっと詳細にを教えておいて欲しかった、さっきも昇降口で自分の靴箱を探し回ったんだから。  それにしても蒸れる、人一倍頭が蒸れる。  9月だというけれどまだ夏の気温。  ハンカチで頭から垂れてくる額の汗を拭いながら周りを見渡すと。  ひそひそと内緒話をするように、(こちら)を見る皆さん。  昨日一日早く二学期を始めたクラスメートたち。  の話をしているようだ、心配されている?  いや、あの、身体は元気なんで、そんな憐れむような目で見ないで下さい。  全然大丈夫ですよー、をアピールするように笑って見せると目が合った人も微笑んでくれたりはすれども話しかけてくる風ではない。  ガラッと誰かが入ってくる音にそちらを見ると男の子が一人私の方へと歩いてくる。  くんだ、だってさっき私の隣がサヤマくんだって教えて貰ったから。  サヤマくんはガタッと席に着くなり、じーっと私の顔、いや、視線は頭にあるから頭を見ていて。  それからね? 「リンタロー、メロンのやつ? それ?」  と真顔で首を傾げていた。
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