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HRを知らせるチャイムと共に先生が教室に入ってきてシュンペーとの話はそこで途切れてしまった。
休み時間の度にアキちゃんとフユちゃんが私を囲んでくれて。
それを見て何となく遠慮していたクラスメートも少しずつ私に話しかけてくれるようになってくる。
皆、私のことを親しみをこめて、リンタローと呼んでくれているのが伝わってきた。
このクラスでの私のポジションというものがちょっとよくまだ掴めないけれども。
嫌われてはいないみたい、むしろ男子女子関係なくオモチャのように可愛がられているようだ。
多分、自分が小さいせいだろうか?
一生懸命、牛乳飲んで小魚も食べているけれど、150センチまで後数ミリ足りない。
お弁当を食べる時にもお茶じゃなくて牛乳を飲んでいた私に。
「そこは変わらず牛乳なんだ」
とアキちゃんが笑っていた。
ちびっこコンプレックスは記憶があろうがなかろうが健在のようで。
自分自身のアインデンティティも変わってないことに安心もした。
勉強については聞かないでほしい、過去の自分がどうだったかも今は知りたくはない。
大目に見てもらえているのは今だけだと自覚して1学期からの復習を今から始めておかなくては。
何しろ、何もかも忘れているのだから。
「リンタロー、大丈夫? 本当に一人で帰れる?」
合唱部のアキちゃんとフユちゃんはコンクールが近いから部活に出なきゃいけないそうで。
「大丈夫、道は覚えてるよ」
1日かけて何人かの顔と名前を覚え敬語をやめた私は二人に手を振り見送った。
昇降口で靴を履き替えてまだ茹だるような暑さの中に外に出ると。
ああ、メロンネットが憎い、厳格に言えばその中の包帯が憎いのだけれども。
とにかくすぐに蒸れだしてたちまち汗が流れ出す。
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