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おは夜
「星が、降ってる。傘をさそう。透明なやつ」
そう言うと、私は傘を取り出した。ちゃんと透明だ。世界は夜の黒、地球はきっと青。わからないことは、わからない。
平均点を完璧になぞった日の、コンビニの明かりが印象的な夜。私は、街でも町でもないくらいの、田舎の近所みたいな道を歩いていた。宿題はやってない。宿題以外もやってない。春風は春じゃないので吹いてないし、約束はしてないので守らない。
空を見る。空は私を見てない。
完璧な水溜まりを完璧に飛び越えて、どこにでもある地面に着地、そうやって、少しだけ鳥の気持ちになる。鳥は私達の気持ちになってくれたこと、無いと思うけど、良いんだ、別に。
空を見る。5秒前も見た気がするけど、5秒前よりも星が5秒分移動していた。
「どこも行きたく無いなあ。私の居場所が、地球以外どこにもない」
呟いても、誰もいないので、呟き放題だ。誰にも聞かれない。それは、寂しさの反証。
夜って、こんなに夜だったっけ。もう少し朝っぽかった気もするけれど。そろそろお家に戻ろうかな。やることもないし。でもその前にコンビニに行きたい。
私は、頭の中でコンビニを検索する。ここから歩いて3分くらいのところに、あった気がする。
歩く。3分間。カウントダウンと歩く速度のBPMが大体同じ。
コンビニがあった。私は、それの扉をくぐる。
「いらっしゃいませー」
店員さんの声と、知らないバンドが奏でるBGM。ギターがカッコいい。歌詞を覚えて後で検索しよう。
パンがめっちゃ売ってるコーナーに向かう。パンがめっちゃ売っている。大体リーズナブル。幸せの味がする気がする。
クリームパンを手に取る。クリームパンは、「俺を選んでくれてありがとうな!」と言っている気がする。
店員さんに110円を払って、外に出る。
「星が降ってる。けど、傘はささない」
そう言って、星空の下でパンを食べる。美味しい。
私の夜は、私達の夜。どっちにしても、そのうちすぐに明ける。
さっきより少しだけ、朝っぽい気がした。時刻は午後11時。平均点をなぞった夜は続く。
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