1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
太陽が西の水平線に沈む頃、 薄暗い台所で私は包丁を手にとった。 衝撃的な先週末の出来事から いつ計画を実行に移すか、ずっと考えていた。 中々よいアイディアが浮かばず足踏みしていたのだが、 昨晩見たテレビに映るあの映像を見て、 私はついに決行する覚悟を決めた。 臭いがしみつかないようにゴム手袋をする。 そして、深呼吸をして覚悟を決めると、 日に当たらないせいで真っ白な彼の身体へと 一息に包丁をグッ!と差し込んだ。 思ったよりもあっさりと刃は沈み込む。 ああ、こんなに簡単なことだったんだ… これまでの鬱屈とした感情をはらすかのごとく、 何度も何度も繰り返し手を動かした。 すると、自分では気づかぬ間に 私の目からは一筋の涙がこぼれ落ちていた。 … … そう…私はタマネギを切っていた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!