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すっかりとそうめんを平らげて、薫と潤は満足げな溜め息を吐き、カガリも「うにゃあ」と鳴いて前足で顔を撫でた。
薫はカガリの喉をごろごろとくすぐる。
「旨そうに食うてくれたな。良かったわ。なぁカガリ、俺これからもっと旨い飯作れる様に頑張るから、そうしたらまたお食事処に呼んだってな」
「僕も! 僕も行きたい。お手伝いするよ〜」
するとカガリは「分かりましたニャ」と言う様に目を細めて「にゃあん」と鳴いた。
「でね、僕、これから動物関連の資格を取って行こうと思ってるんだ。今まで手当たり次第というか取れそうなやつ取ってたけど、猫又を増やさない様にするんだったら、有効なのもあるかも知れないもんね」
「なるほどな。ちゃんと考えとるんやな」
「そりゃあそうだよぉ。薫だってどうでしょ?」
「せやな。俺はこっちでの目標は自分の店持つことやな。あのお食事処みたいなええ店にしたい。潤、お前役立ちそうな資格持ってそうやな。手伝ったってな」
「ええ〜、なんかあったかなぁ。じゃあそんな感じの資格も調べてみる? ソムリエとか?」
「そんな感じやな。もちろん俺にも資格はいるやろうけどな。でな、最大の目標は向こうのお食事処との二足わらじや。どっちも片手間にする気は無いで。絶対にええ相乗効果が生まれるはずや。猫たちに旨い飯食うてもろて少しでも癒されて欲しい。その技術をこっちで鍛えるんや。それだけやったら雇われでもええんやろうけど、お食事処みたいな雰囲気の店は俺の憧れになったからな。自分で切り盛りしてみたいわ」
「それは壮大な夢だねぇ。カガリ、どう思う?」
するとカガリは「凄いねぇ」と言う様に笑顔で「にゃあん」と鳴いた。
「お、そうかそうか。カガリも賛成してくれるか」
薫は嬉しくなってカガリをくしゃくしゃと撫でた。
「カガリ、またこんな飯作るな。それで俺の成長を見て欲しい。母ちゃんとかがおるときはそうも行かんけど、食いに来てくれるか?」
カガリはまた「にゃあ」と鳴く。そしてカガリは立ち上がる。縁側まで歩いて行くと、振り向いて「にゃあん」と鳴いた。
「カガリ、帰るんか。また来てな」
「またね〜」
薫と潤が手を振ると、カガリはまた「にゃあ」と鳴いてひらりと庭に降りる。そして振り返ることをせずに走って行った。やがてその小さな背中は見えなくなる。
「さ、これからやること山積みや。気合い入れんとな」
「そうだねぇ。猫たちのためにできることをやりたいね。僕は猫又を生まないために。薫は猫又を癒すために」
「せやな」
薫と潤はにっと笑うと、こつんと拳を突き合わせた。
「薫は夢もできたしね」
「おう」
これからが楽しみだ。薫と潤は今までとは違う日々を始める。それが思った通りの未来になるかは判らない。だが後悔の無い様に全力で挑みたい。
新しいことを始めるのはこんなにもわくわくするのか。久々に思い出した感情でもあった。薫はそっと拳を握り締めた。
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