私の知らない涙

6/10
前へ
/10ページ
次へ
紗知:15歳 目の前に差し出された、銀色のリング。白い小さな宝石が、嵌め込まれている。 「全員とは、すぐ別れるつもりだよ。」 それを、私の薬指なんかに通し、いつもと違う穏やかな笑顔で、告げる。 「俺にはお前しかいない。だから、俺と一緒にいろ。これからも。」 信じられなかった。すごく嬉しかったの。温かいお風呂に入った時より、美味しい物を食べた時より、ずっと胸が暖かくて、幸せに満ち足りているなんて、思ってしまった。 私がアキの1番になれたんだって。親にも選ばれなかった私を、特別な存在にしてくれるんだって。 でも、すぐに現実に引き戻された。 あ、これ。 私も所詮、同じって事か。 よく見れば、安物だ。彼には、もっと高い物をぽんと買えるだけの財力がある。それに比べれば、これは数万程度の物。 抱いて、捨てられた、彼女達に与えた物と変わらない。 あぁ、そうか。15歳だもの。仲間内にも、食べ頃な年頃って笑っていたし。 私を女として利用する事に、切り替えたって訳ね。 私だけは、特別だと思いたかったな。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加