私の知らない涙

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紗知:10歳 何も無い。私には、何も。 何も無い私には、感情すら存在しない。 「…ママ。」 呼んだところで、帰ってきてくれる筈も無く。虚しく畳の中に、吸い込まれるのみ。 体が言う事をきかない。痛みが体を駆け巡り、動きを封じているよう。 痛くない。痛くない。 これは、私じゃない。 痛いのは、私じゃない。 そう念じれば、少し痛みが鈍くになる。マシになった気になる。 気を失うまで、ずっとそれを繰り返した。
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