西軍の大将

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西軍の大将

 石田三成は伏見城を包囲していた。  西軍の兵は数多くの将が集まり兵力は4万に達していた。対して、籠城しているのは鳥居彦右衛門のみ。兵はわずか1800。    絶対に勝つだろう。  しかし、三成は何の感情も示さず無表情だった。  この男は冷淡に見える。高次以上に線が細く弱々しい容貌をしている。とてもじゃないが戦場に立つような男には見えない。  しかし、その実、張りつめた弓矢のような過激な性格をしていた。悪は決して見逃さず、見つけようものならば鋭利すぎる頭脳を持って断じ、裁きを下した。いわば正義の裁判官であった。  今、その三成は家康を悪と見定めていた。それもただの悪ではない。絶対悪である。 「家康めは、太閤様から受けた恩義も顧みず、己の欲望のままに豊臣の世を奪おうとしている大悪党である。正義の名において征伐せん。手始めに伏見城にて勝鬨(かちどき)をあげようぞ」  西軍は三成の呼び掛けで集まった反家康連合軍といっていい。兵は多い。しかし、まとまりはなく士気も高いとはいえない。  これは三成に総大将としての風格がないことが原因かもしれないし、三成の掲げる正義が偏向的だったことが原因かもしれない。
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