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「鎮幸。試しに一つ打ってみるか」
「わかりました」
仏狼機砲を船倉から甲板へ持っていった。皆が騒ぎ出し、踊りどころではなくなる。おちゃらけていた連貞も背筋を伸ばした。
鎮幸は装填筒という2尺(約60cm)ほどの筒に砲弾と火薬を詰めた。次に装填筒を仏狼機砲の背中の穴にセットし、楔をうって動かないようにした。
「準備はよいか?」
皆が仏狼機砲にじりじり近づき、目を凝らす。
「できています。皆、離れよ」
集まっていた者たちはぞわぞわと離れていった。しかし、視線は全てその砲口に集まっている。
砲口は地平線のずっと向こうを見ていた。
「打て」
鎮幸が着火すると、轟音を一発ならし、一瞬のうちに真っ黒い硝煙に包まれた。砲弾は青天井に放物線を描いてどこまでも遠くまで飛びそうだった。滞空時間が長い。風で煙が流れきったとき、5町(約500m)ほど先で、高い水飛沫が上がった。
「「ワアアアーーー」」
船内が歓声に包まれる。
宗茂はニヤリと笑った。
「これでは家康を木っ端微塵にし、首すら残らぬかもしれん」
「西軍の勝利は間違いないですな」連貞が同調した。
宗茂は天下に武勇を知らしめた男である。
その男に兵器という科学が加わった。まさに鬼に金棒といっていい。
「宗茂様。他のふらんきも試しますか?」と鎮幸がいった。
「いや、よい。楽しみはまだ取っておこう」
船倉にはまだ、あと8台の仏狼機砲が眠っていた。
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