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高次は深呼吸すると、歩いて周囲を見回した。これが霊山の山頂か。見渡す限り展望が開けており、東には信州の山々が、北には伊吹山が見えた。西を向けば、近江国と琵琶湖を望めた。
「ああ。琵琶湖が見える」
高次は感嘆の声を洩らした。やはり美しい。
ーーそうか。わしにも誇れるものがあった。琵琶湖だ。
血のおかげだ。京極であったから琵琶湖との関わりを持てたのだ。琵琶湖のことならどの大名よりも知っている自信があった。
「門斎。琵琶湖は静かだと思わんか」
「はい。そう思いますが」
「戦国の世には似合わん淡海だ。わしのような淡海だ」
このとき、高次には一つの妙案が生まれている。それは高次だからこそ、いや、高次にしかできない荒業だと言っていい。
「似合わないとは何をおっしゃいます」
「そう思われている、ということだ。世間にな」
「と言いますと?」
「門斎。もう良いのだ」
「さっきから何をおっしゃっているのかわかりません」
高次は門斎の目を見据えた。
「決めたということだ。わしがどうするべきか、京極がどうするべきかな。わしらしい戦い方をしようじゃないか」
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