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大津城包囲
天は才を与える変わりに光を奪った。
大谷吉継は盲目の将である。
そればかりでなく、皮膚はただれて醜悪な人相になっているため、顔を頭巾で覆い、あらゆる皮膚を一目から隠している。
だがその見た目に反比例するように才気が溢れ、明晰な頭脳と豪胆な気質を持ち合わせていた。
今、その吉継は大津城を包囲している。
高次の曖昧な態度を赦さず、決断を迫っていた。天守では高次と吉継が対峙している。
「高次殿。西軍に味方をする、ということで異存はあるまいな」
高次は吉継を前にして圧倒されていた。吐く言葉が重い。これが大名の風格なのかと感心さえしていた。
「そうだ。京極家は西軍に加勢する」
高次はきっぱりと返事をした。
「了承した。それでは儂は今より北陸の前田利長の征伐に向かう。高次殿にはその後詰めとして来て頂きたい」
「今からか?」
「当然だ。事態は急を要する。猶予などない」
「わ、わかった」
「返事ははっきりとせよ」
「わかった」
吉継は流れるように話を進めていった。
「良い。それでは証拠として人質を要求する」
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