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「人質か?」
「そうだ。戦いが終わるまでの短い期間だ。なんら問題はないはずだが」
「わかった。では家臣からひと」
「家臣ではない。高次殿の嫡男、熊磨殿をもらいうける」
高次の顔は明らかに曇った。
高次には8歳になる一人息子がいる。側室との間にできた子だが、当然、京極家の跡取りとなる可能性がある。容易に手放すことはできない。
「無茶な。いくら吉継殿の頼みではそれは飲めん」
「わしの頼みではない。秀頼様*の頼みだ」
高次に衝撃がはしった。豊臣秀頼は、故秀吉の一人息子で、役職でいえば現日本最高である。秀頼の頼みとあれば、断れるものなどこの日本に存在しない。吉継は高次の逃げ道を無くすために、秀頼の言をとっていた。
「わかった」
高次は渋々了承した。
吉継はやり手の男であった。思い通りに人を動かす術に長けている。
「二言はあるまいな」
吉継は念を押し、大津城を跡にした。
※豊臣秀頼。豊臣秀吉の一人息子。この時、9歳。
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