大津城包囲

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 大津から出た吉継は思案していた。  吉継は嗅覚に優れ独特の慧眼を持っている。一級品の勘といっても良い。高次は怪しい、というのが吉継の感想だった。  所詮、西軍は寄せ集めの連合軍。吉継は元よりこの軍を信用していない。いつ裏切り者が出るとも限らない状況のなか、西軍の中で吉継だけは目を光らせていた。ささくれのような些細な引っ掛かりにも細心の注意を払った。  ーーもしかしたら高次は裏切るかもしれん。それならば、わしがいない間、高次の動向を見張らせる者をおくか。  吉継の注意は、頭の片隅に置いておくという程度のものではあったが、短い時間の中であらゆる対策講じていった。その行いにぬかりはない。  その頃、西軍大将、石田三成は美濃(岐阜県)攻略のために大垣城に向かっていた。西軍の行軍は順調である。
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