進軍

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 高次は琵琶湖の東側から迂回して北陸を目指している。  霊山への道と同じだ。瀬田の唐橋を通って中仙道に入り、琵琶湖を左手、鈴鹿山脈を右手に北上する。途中別れ道で美濃へ行かずに琵琶湖の北岸へ向かっていく。  遅く歩いても、3日もあれば琵琶湖を抜けれるが、高次はその10倍以上の時間をかけようとした。  瀬田の唐橋(琵琶湖最南岸にある橋)についたとき高次は琵琶湖を小一時間ほど眺め、軍を進めず宿泊した。その時、門斎に秘事を話していた。 「門斎。お主を信用しているから言う。秘密を守れるか?」 「はは。当然です」 「実はわしは機を見て、西軍を裏切ろうかと思っておる」 「なんと」  門斎は表情を変化させないよう真顔で聞いていた。しかし、驚いてはいただろう。戦国の世で、裏切りは華と言われているが、高次がこの判断を下すのは予想外であった。 「やはりこの勝負、家康殿の勝ちは間違いないだろう。であれば、勝ち馬に乗らねば家は途絶えてしまう。京極家がどれだけ名門であろうと世の中を動かす力はない。その力を持つ者は家康殿を持って他にはおるまい」 「しかし、裏切るとなれば人質となった熊磨様は?」
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