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「そうですか。しかし西軍が三成殿の意思だとすれば、家康殿には勝てないかもしれませんな」
「何をいう。恩義に報いるのに勝ち負けもない」
宗茂は断言した。
「それに、我らの活躍次第でいかようにも戦況は変わろう」
自信に満ち溢れたその言葉は連貞を安心させた。
宗茂は理屈ではなく感覚的に理解していた。城主である自分の態度や姿勢が、末端の兵士まで影響し士気が変わることを。自分が弱気になれば軍全体が弱まる。逆に強い気持ちを持ち続けていれば、皆、一丸となって戦う。
宗茂は自分を一つの着火元として、皆の闘志を燃え盛る炎にする術を心得ていた。
だから宗茂は迷わない。いつも変わらず芯を通し、真に強い男でいた。
「しかしまあ急よのお。天下の台所、大阪へ来たというのにゆっくり物見もできんか」
「ははは。家康殿を倒したら思う存分楽しみましょう」
「それもそうだ。では行くか」
宗茂の軍は意気揚々と行進した。
その後ろを、今にも壊れそうな滑車の音が追う。何重にも重ねらた布の下に、仏狼機砲が隠れていた。
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