籠城

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「すまぬ。みんな。またわしは間違えておったようだ。大津城と共に戦うのではない。わしは皆と共に戦いたいのだ」  高次は感嘆に胸を膨らませて演説を終えた。門齋がその後を取り仕切る。 「皆のもの聞いたか! これより籠城に入る。しかし安心せい。大津城は鉄壁の城じゃ。そう簡単には落ちん。まずは道を断つ。瀬田の唐橋と逢坂関(京へ通じる関所)を封鎖せよ」  大津城を鉄壁の城といえる理由はその立地にある。  瀬田の唐橋が近いことがまず一番の要因だ。  この橋を境に、西側に大津城があり、東側へ中仙道と東海道が伸びていおり、この橋を落とせば美濃と隔離できる。中仙道と東海道を封鎖することは、日本列島を東西に分断したといっても過言ではなく、瀬田の唐橋を巡った争いは古来より幾度と繰り返されてきた。今回もこうなることが予想される。  次に逢坂関が近い。  この関所から西が京都で、東が大津城だ。ここも要衝となる。  つまり瀬田の唐橋と逢坂関さえ封じてしまえば、大津城への道は琵琶湖西岸の西近江路のみとなり、日本のど真ん中に浮かぶ弧城となる。鉄壁の城だ。 「行けいっ!」  下知が放たれ、二つの要衝に数百の兵を派遣した。  封鎖は成功した。しかし、大阪から大垣間は人馬で溢れ帰っており、これが騒ぎにならないはずがない。  京極高次裏切りの報は音の早さで全土に広がった。
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