電光石火

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電光石火

 戦神 摩利支天の如し。  日輪の兜。  月輪文最上胴具足。  兜には真円の立物、鎧の中央には朱色で大きく丸が描かれており、二つの輪貫(わぬき)の文があたかも太陽のような威光を放っていた。  立花宗茂。堂々たる姿である。 「三成殿から、大津城を攻略せよとの指令が来た。今より大津へ向かう」  宗茂の前には、綺麗に整列した立花軍がいた。兵の一卒まで集中しており、今までのおちゃらけた姿は無い。天下無双たる最大の所以がここにある。  徹底した基礎の追及だ。  軍律の厳守。日々の鍛練。厳粛な規律の上で、兵一人一人に慈悲をもって接する。特別なことは何もしていない。だが、それが精強な立花軍を作りあげた。  この統率方は、もう一人の英雄と呼ばれる父、養父、立花道雪(どうせつ)から叩きこまれた。  道雪もまた生涯無敗の将である。下半身不随という不自由な身ながら、見事な統率力と戦略を持って活躍していた。この道雪には男子がおらず、宗茂を養子として貰い受け教育を施した。その道雪から譲り受けたものが、もうひとつある。  名刀 雷切*。  宗茂は雷切の長い刀身を頭上に掲げた。 「今より精鋭騎馬30騎にて、瀬田の唐橋の奪取に向かう。他の者は鎮幸指揮のもと、後をおって来い」    ゆうやいなや、宗茂は駆けた。 ※雷切:雷を切ったとされる刀。某漫画の元ネタ
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