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「状況はどうだ?」
「瀬田の唐橋と逢坂関は奪われ、毛利元康を大将におおよそ3万ほどの人数に囲まれております。しかも」と門斎が言った。
「しかも?」
「立花宗茂がおります」
「天下無双か……。厳しいな」
しかし、その弱気な言葉とは裏腹に、高次の目は諦めていなかった。
二つの要所を奪われたといえ、大津城が鉄壁の城であることに変わりはない。
三の丸、二の丸、本丸とあり、その間の堀には全て琵琶湖の水がひいてあり、到底自力で渡れるものではない。
また、三の丸へ入る橋は東と南に一本づつ、西に二本しかなく、二の丸へ入る橋は東と西に一本づつ、本丸へは橋が一つしかない。
そして、そのどれもが鉄製の扉で固く閉ざされており、守る側は、ただ門に近づいてきた兵を挾間から隠れて撃っていればよい。
普通、城を落とすには三倍以上の兵力がいる、と言われている。それだけ地の利というのは大きいのである。
ただ、籠城の何が怖いかと言えば、その精神にあった。刈る方と刈られる方という構図である。当然、城を守る方が刈られる側だ。殺し合いをするという時に、その意識の差は顕著に表れる。
「亀のように耐え凌ぎますか?」と門斎は言った。
籠城戦は高次の性に合っていた。身を守りながら堅実に攻撃を加えていく。消極的な戦い方と言っていいが、しかし確実ではある。
「それが得策だ」
高次は腕を組んだ。
「しかし……。わしは攻めるぞ!」
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