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「我らは歴史ある京極ぞ。後ろには守護霊がいる。我らを見守ってくれているのだ」
「何を……。お兄様らしくない」
「竜子。実はな、わしは先祖の霊に会ってきたのだ。わしも、竜子も、天の加護の元に生きておることがわかった」
「馬鹿々々しい」
「そんなことはない。今から証拠を見せる」
ーー馬鹿々々しいか。その通りだ。先祖はすでに我らを見放しておる。しかし、この場を乗り切るには!
高次は自分の中に流れる京極の血を利用しようとしていた。天の加護などないことは知っている。しかし、そうでも言わなければ、竜子を、そして兵を安心させることはできないと思った。
高次は望楼に空いた穴から外を眺めた。目の前には長等山があり、そこに立花ののぼり旗が見える。
ーー長等山から撃ったのか。
合点がいった。砲撃においてこれほど好条件の立地はない。なぜ気付かなかった。高次の愛した場所は、大津城唯一の弱点だったのだ。
天下無双と謳われるだけあり宗茂の着眼点はやはり鋭かった。だとすれば、宗茂は更なる攻撃を加えてくるだろう。
「竜子! 見ておけ! わしは絶対に死なん! それが証拠だ!」
高次は状況を知るため三の丸に向かって走った。
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