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三の丸では壮絶な白兵戦が行われていた。高次もその中に入るが、高次が入ったところで戦局が変わるわけもなく、むしろ足手まといでしかない。
「なぜまた参られた」門齋だ。
「加勢せねば負けるではないか!」
「し、しかし高次様一人で加勢など」
高次と兵が揉み合いになり、高次は倒された。門齋は慌てて槍をさして高次を助けた。
「お逃げください!」
「わしは逃げん!」
その時、城の後ろで歓声が上がった。けたたましい雄叫びの中に、微かに宗茂と叫ぶ声が聞こえる。おそらく立花宗茂が参陣したのだ。
立花宗茂はまさしく太陽だ。一貫した信念と傑出した才能が周りを照らし、活力と勇気を与える。天下に一つしかない太陽だ。
では高次はどうなのだ。
勇んでは、怯え、震え上がり、悩み、それでもまた勇んでは、挫折し、絶望して悩む。しかし、そこからまた一歩立ち上がる。
儚い輝きを何度も繰り返す様は、まさに蛍の光だった。だが、太陽のもとではその光はかき消され、何の存在感も放たない。それでも高次は全力で輝こうとした。直ぐにその光は消える。しかし、もう一度。もう一度輝こうとした。
高次は弱い。輝き続けることはできないし、その輝きもまた淡い。しかし、その弱さの中に美しさがあるのではないか。弱さの中にこそ強さがあるのではないか。高次は蛍なのだ。どこにでもいる、しかし美しい蛍なのだ。
一人の京極兵が二の丸から走ってくる。
「助けに参りました!」
また一人走ってくる。一人、二人、さらに増える。皆、弱い兵達だ。臆病者の兵達だ。
増える。また増える。
二の丸にいた者の、ほとんどが加勢に来た。弱い者の心は弱い者でしか動かすことはできない。高次の弱さは皆の心を動かしたのだ。
「みな……。みなのもの、かかれい!」
鉄と鉄が衝突し、声と声が衝突し、熱気と熱気が衝突する。
乱戦になった。
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